ドラマ「コーヒーを飲みましょうか？」感想

「コーヒーを飲みましょうか？」
原題：커피 한잔 할까요?
公開開始：2021年10月24日〜12月2日
（Huluで視聴）

⚠ 以下、ネタバレです ⚠



約30分×12話のWebドラマではあるものの、よくある、ドタバタでサクッと見られる系統のドラマではなく、1話1話じっくり噛みしめて見たくなるタイプの作品でした。

公務員試験に落ち続ける就職浪人生のゴビ（オン・ソンウさん）は、何度目かの不合格の通知を受け取った日に偶然立ち寄った小さな店『2大（イデ）珈琲』で口にしたコーヒーをきっかけにバリスタを志望するようになり、店主のソク（パク・ホサンさん）にここで働かせてほしいと懇願する。
20年ひとりで店を切り盛りしてきたソクは初め断り続けるが、ゴビの熱意を見て彼を採用することにする。

2大珈琲でのゴビのバリスタ修行の傍ら、1話完結で、音楽ライターのジュヒ（ソ・ヨンヒさん）、Web漫画家のミナ（キム・イェウンさん）、パティシエ志望の高校生ガウォン（チュ・イェジンさん）という店の常連や、立ち寄った客ら周囲の人々の物語も描かれるという形式。

ちょっとびっくりしたのは、ジュヒがソクの恋人という設定ですかね。かなり歳が離れているように見えたので。
ただ、パク・ホサン氏1972年生まれ、ソ・ヨンヒさん1979年生まれ、そしてジュヒはバツイチのシングルマザー設定なので一応なくはない、かな…うーん、でも個人的にはやっぱり微妙ではあるかな。

ともあれ、物語の舞台は中盤までほとんどが『2大珈琲』とその周辺、という狭い範囲に限られ、途中まではある意味現実とファンタジーの中間のような感覚がありました。
そこへ2大珈琲の店舗のオーナーが、店を他の用途に使いたいからと現在の契約満了を以て立ち退くようにと言ってくる。閉店するしかなくなったソクは、後輩バリスタのサンホ（キム・ユルホ）が経営する大規模なカフェにゴビを出張させ、そのままゴビは、2大珈琲が閉店することを知らないままそこで働くことになる。

そして最終回、このドラマにも一気に現実が押し寄せる――それは、新型コロナウイルスの流行。
流行が一番激しかった時期の様子は、ドキュメンタリーとアニメーションを交えて描かれ、ドラマ本編に戻った時、街はほとんどの飲食店が閉店を余儀なくされ、ゴーストタウンさながらと化していた。
これが、この作品がファンタジーでも単なるノスタルジアでもなくなった瞬間。

その状況でも、2大珈琲とサンホの経営するカフェは両方生き残っていた。
2大珈琲は立ち退きを要求されていたが、オーナーの母親が息子の身勝手な行動を叱り、立ち退き命令は撤回それていた。しかしソクは、以前のような客足が見込めない状況で、閉店するべきか迷っていた。
一方サンホは、カフェに客足が戻ってきたところで、経営規模拡大にあたり、ゴビに短期で海外の農場担当者にならないかと打診する。
ゴビはバリスタとしての経験値を積める機会に喜ぶが、ずっと連絡をとっていなかったソクと2大珈琲の状態を耳にする。

ちょうどその頃2大珈琲では、顔馴染みを招き、ガウォンのバイト先の店で作ったジェラートを使ったアフォガードの試作品を振る舞っていた。エスプレッソの苦味とジェラートの甘みが調和したアフォガードは、コーヒーに詳しくない人々をも和ませた。
2大珈琲で働いていた頃ゴビと散々対立した評論ブロガーのチョイハット（ソン・ジェリョンさん）がゴビの新しい勤務先でジュヒのSNSを見て、ソクが一人分のジェラートをとってある、あれはゴビのだ、と言う。
ゴビが走って2大珈琲に着いた時、顔馴染みの面々はすでに帰っていたが、ソクはゴビのためにアフォガードを作る。
それを口にした時、ゴビは専門家らしい言葉を失い、ただ泣きながら「この味が懐かしい」「またここで働きたい」と言うのだった――。


ガラッとトーンが変わった最終回の冒頭はやはりショックが強かったです。
他ならぬ私自身がコロナの流行で生活が一変し、その結果健康まで害して元の生活には二度と戻れなくなってしまったという現実があるので。
経済的損失は、健康な身体があれば取り戻せる可能性がまだあるのでは？という思いが強いので複雑な気持ちになります。でも、経済的損失があまりに大きければ立て直すのは難しいし、身体は健康でも精神的ダメージが深い場合もあるよね…
そのくらいコロナが社会にもたらした影響は大きかったんですよね。

ただ、結末はこの作品らしいものだったと思います。やはりソクの隣にはゴビがいて、カウンターにはジュヒ、ミナ、ガウォンがいる――それが2大珈琲、というくらいしっくりくるようになっていたから。
いつかゴビとガウォンのコラボも正式にできたらいいね。オレンジマキアート、すごく美味しそうだった。

そうそう、このドラマはコーヒーが大好きで詳しい方が見たらもっと楽しめると思います。私はコーヒー味のスイーツは半端でなく大好きで、フォームドミルクたっぷりのカフェラテも好んで飲むのですが、ブラックコーヒーが飲めないお子ちゃま舌なので、ブラックコーヒーで飲んだ時の豆や焙煎の違いなどは正直全然わからない…そこが残念でした。
Webドラマだけど、割とマニアドラマと言えるかもしれません。